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むち打ち症発症のメカニズム

 

むち打ち症発症のメカニズム  

むち打ち症の発症の解剖構造からみるとは、首を前に曲げると、頚椎の後方にある上下の棘突起(骨)の間(靭帯部分)が広くなります。そのため頚椎の骨と骨とを繋いでいる軟骨である椎間板(椎間板はメスでも切れるような比較的柔らかい物質です)に水平に線を引くと、頚髄神経の前方は椎間板を、後方は上下の棘突起(骨)の間にある棘間靭帯を通ります。すなわちこの一線上において、頚椎の骨性部分はわずかに椎間関節の上関節突起の先端だけですから、解剖学的構造によって、刃の薄い日本刀でも容易にほとんど抵抗なく斬首できることがわかります。

 車に乗っていて追突された時には、後方から座席ごと背中が水平方向に前方に押し出される衝撃を受けます。体の後方からの衝撃では、唯一上下の骨の間を繋いでいる椎間関節も制動には役にたちません。それは椎間関節は上関節突起と下関節突起で構成されていますが、上関節突起は下位の頚椎の一部であり、上位頚椎の下関節突起よりも前方に位置しています。このため、追突によって体が前方に移動し頭が残るような衝撃を受けると、骨性要素である椎間関節は制動には全く関与しませんので、制動に関係する最も硬い構造物は椎間板になります。しかし、椎間板はメスで容易に切ることができるほど柔らかい軟骨ですから、「ずれる力」がかかると、簡単に断裂します。これが低速度の追突でも、椎間板損傷を引き起こし、むち打ち症を発症する理由です。

 車を運転している時、前方や側方、後方を確認するため、頭はヘッドレストに接しておらず首だけで支持されています。運転席に座っている時の姿勢は、ブレーキ、アクセル等のペダルを操作するために背もたれは軽度後方に傾いており、首は軽く前方に曲げています。この首の位置では頚椎の椎間板から棘突起の間が一直線になります。すなわち切腹し斬首されるときの首の位置になり、首の骨で防御するものはありません。首がこの位置で追突されれば、車に固定されている座席とともに背中も前方に移動しますが、頭部は慣性でその場に残るため首に剪断力(ずれる力)がかかります。文献によれば、追突された時頭部に対して肩が15cm前方に移動しても、頭部は追突以前の位置に止まるとされています。首が剪断力を受けた時この力を防止する骨性の構造物はありませんので、可動性のない軟骨である椎間板に最も剪断力がかかり断裂します。追突時に身構えればむち打ち症の発生をある程度防止できますが、それは筋肉を収縮させて背骨全体を棒のように固定し剪断力を防ぐためと考えられます。

 これまではむち打ち症の発症の原因は、首の生理的な可動域を超えて後屈させられた時に起こると考えられてきました。しかし、最近の研究では首の生理的な可動域の範囲内でも発症することが解りました。すなわち、低速度で追突されてもむち打ち症を発症するのです。

 すなわち、むちうち症は、首への外傷によって、頚椎の椎間板にずれが生じて椎間板損傷を起こして発症することになります。

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